表の脳と裏の脳
私たちの脳には『表の脳』と『裏の脳』があります。
表の脳とは、脳に対して入力された情報にしたがって計算を行い、適切な行動をとらせるための命令を出すネットワークです。
この表の脳のネットワークのことを『タスクポジティブネットワーク』と呼びます。
この表の脳に対して、裏の脳である『タスクネガティブネットワーク』と呼ばれるネットワークがあります。
この裏の脳である『タスクネガティブネットワーク』は、別名『デフォルトモードネットワーク』とも呼ばれています。
このデフォルトモードネットワークの働きとしては、私たちの社会性や発想力の向上などを司っています。
つまり自分自身のこれまでの経験や、それらに基づく記憶などを参照して、自分の行動が正しいかどうかを判断したり、自分の行動が正しかったかどうかを判定したりする働きをしています。
裏の脳である『デフォルトモードネットワーク』は、お子様の発想力の豊かさや、対人スキル・社会性スキルに強く関与しているのです。
ママが大好きだけどママの言うことを聞かない否定系発達型のお子様
発達障害になりやすい非定型発達型のお子様は、定型発達型のお子様とはデフォルトモードネットワークの仕組みが異なっていると言う説があります。
つまり定型発達型のお子様と、非定型発達型のお子様の対人スキルや、社会性スキルの基本的な仕組みが、初めから違っていると言う考え方です。
じつは長い間、発達障害ケアに携わっていると、それがなんとなく本当に当たっているように感じます。
一般的な定型発達型のお子様は、まず本能的な行動原則として『ママや先生に言われたことには原則的に従う』と言うものがあります。
これは私たちが狩猟採集の原始時代からのもので、赤ちゃんがママの言うことを聞かないと、厳しい生活環境の中で、子育てが難しくなってしまい育児放棄につながるため、子供は本能的にママの言うことを聞くのです。
同じように、村のリーダーや先生の言うことを聞かないと、村八分にされてしまうため、目上の人の言うことを本能的に聞くのも、定型発達型のお子様にとっては当たり前の感覚になっています。
そうすることが、これまでの社会では生存に有利に働いていたからです。
それに対して非定型発達型のお子様の場合、この本能的にママや先生の言うことを聞かなければいけないと言う、社会性スキルの基本の部分が上手く機能していないようなのです。
ですから非定型発達型のお子様は、ママの指示はいちおう理解はしているけれども、それに従うかどうかは、自分の気分で決めているのです。
一般的な定型発達型のお子様が、ママの言うことを聞かない場合には、何らかの不満があって反抗しているのです。
ですが非定型発達型のお子様の場合には、不満もないし、反抗する気もない、なんなら自分は素直でとても良い子だと思っているけれども、ママの言うことは聞かない。
とても厄介な子供なのです。
そして拙いコミュニケーションスキルで、自分の意思を通そうとするために、こちらの指示が通らない問題行動のある子供に見えてしまっているのです。
発想が豊かな非定型発達型のお子様
非定型発達型のお子様の『デフォルトモードネットワーク』の特性には、良い面と悪い面があります。
良い面については、発想が豊かになると言う面です。
私たちの脳のリソースには限界がありますので、それを効率よく利用しようとする仕組みがあります。
たとえば定型発達型のお子様の場合、計算問題などの課題をやっている場合、裏の脳であるデフォルトモードネットワークの働きを止めて、脳が計算問題に集中できるようにしています。
それに対して非定型発達型のお子様の場合、計算問題などの課題をやっているときにも、裏のデフォルトモードネットワークが働いてしまっていることが分かってきています。
この傾向が強すぎると、何かの課題をしていても、次々に意識が移ってしまい、落ち着いてものを考えられなくなってしまいます。
しかしデフォルトモードネットワークの未発達を改善して、適度にデフォルトモードネットワークが改善すると、発想が豊かなお子様として成長することができます。
リンゴが落ちたのを見て、万有引力を発見したニュートン先生の逸話こそが、このデフォルトモードネットワークの働きだったと考えられています。
相手の気持ちにたって考えられない非定型発達型のお子様
デフォルトモードネットワークが未発達だと、何かの課題をしていても、次々に別の発想が浮かんでしまい、気が散ってしまいます。
お子様が絵本や動画などを見ていて、急に思い立ったように立ち上がって、周囲をキョロキョロ見回すような行動をとることがありますが、このときにもデフォルトモードネットワークの働きで、何か別のアイデアが思い浮かんでいる可能性があるのです。
それと同時に、デフォルトモードネットワークが未発達なときの大きな問題として『相手の気持ちが理解できない』ことが挙げられます。
私たちのデフォルトモードネットワークの働きとしては、多面的な物の見方を司り、社会性スキルを高める、つまりは相手の気持ちを良く理解して、上手に人間関係を育むと言う機能があります。
それが未成熟な場合、相手の気持ちや立場の理解ができず、一見すると正しいことなのですが、自分勝手な視点に立って、ひとりよがりな意見を言うようになってしまいます。
お子様はワガママなのではなく、本当にそれが正しい意見なのだと自信をもっているのですね。
非定型発達型のお子様の対人スキルや社会性スキルを高める場合には、デフォルトモードネットワークの活動を発達させることが、とても大切なのです。
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